3月15日、えちごトキめき鉄道の鳥塚亮社長がブログにてクハ455-701を受領したと発表しました。また、ブログには既に譲渡されていたクモハ413-6が松任工場にて"国鉄交直両用急行列車カラー"に塗装されている画像が公開され、順調に進めば4月中には直江津に到着、翌5月からは運行開始を予定していることが明かされました。
今回は、クハ455-701をはじめとした413系の七尾線での活躍を振り返りながら、譲渡された4両の今後の動きについてご紹介します。


最後の「急行形車両」として令和まで走り続けたクハ455形700番台

FullSizeRender
▲クハ455-701先頭の6両で七尾線を上る
(2020/7/19 9:08  千路ー羽咋間)

FullSizeRender
▲413系B09+B04編成
(2020/7/19 8:03  羽咋ー千路間)

クハ455-701・702は、1971年に製造されたサハ455-1・6を種車として先頭車化改造された車両で、413系B04・B11編成の金沢方に組み込まれていました。そもそも金沢総合車両所(金サワ)所属の413系は、北陸地域の急行列車で活躍していた457・475系等から流用した床下及び屋根上機器や電装品等に、1986年から製造された車体を組み合わせてできた系列です。B01〜B11編成までの3両編成11本が製造されましたが、11編成全ての車体が新製されたわけではなく当時は比較的車齢が若かったサハ455-1・6の2両のみは中間付随車(サハ)から先頭車(クハ)に改造しただけとなっています。そのほ他の車両は車体以外を流用していることからも、当時多額の債務を抱えていた国鉄がいかにコストカットしたかったのかが伺えます。
国鉄からJRに転換後、使用される車両は大きく分けて通勤形・近郊形(一般形)・特急形の3タイプに改められたため、急行形車両は比較的早い段階から淘汰されていきました。それでもなお活躍を続けたのがこの2両というわけです。

当初413系は北陸本線を中心に運行されており、七尾線の主力車両だったわけではありません。2010年には521系の投入で運用範囲が縮小されたものの、依然として小松ー直江津間で運行されてきました。しかし、転機となったのが2015年3月の北陸新幹線開業です。並行する北陸本線は第三セクター化され、えちごトキめき鉄道(新潟県内)・あいの風とやま鉄道(富山県内)・IRいしかわ鉄道(石川県内の金沢以東)に分割されました。これに伴い、413系5編成があいの風とやま鉄道に譲渡、残りの6編成は車体塗装を変更して七尾線での限定運用となりました。

IMG_4444
あいの風とやま鉄道413系は現在も北陸本線時代の塗色を纏う
(2020/7/18 20:29  金沢駅にて)

しかし、先日のダイヤ改正では521系100番台の投入完了に伴って413系は七尾線から完全撤退しました。一方で、あいの風とやま鉄道では未だに譲渡された車両が全車現役ですが、いずれもクハ455形を組み込んでいません。また、521系1000番台の増備に伴い、観光列車に改造されたAM01編成「一万三千尺物語」以外は近い将来に引退する予定となっています。


急行形の雰囲気を色濃く残す車内外

IMG_4481
▲クハ455-701を組み込むB04編成
(2020/7/19 15:59  七尾駅にて)

FullSizeRender
▲"クハ455-701"の車番表記

FullSizeRender
▲車内の様子

改造に伴ってデッキは廃止されているものの、車端部寄りの片開き2ドアや分散式クーラー等が往年の急行形車両の雰囲気を色濃く残しています。車内は一部がロングシート化されていますが、車両中央部に新製当初からのボックスシートが残っており、トイレや洗面台も往年の急行形車両を物語っています。(さすがにトイレの写真は撮っていませんが…)

これに目を付けたのがえちごトキめき鉄道の鳥塚社長です。鳥塚氏自身も鉄道ファンであり、2009年から2018年までいすみ鉄道の社長を務めていました。社長に就任して間もない2010年にはJR西日本からキハ52 125とキハ28 2346を譲受し、いすみ鉄道の目玉列車として運行を始めました。鳥塚氏は貴重な列車を走らせることによって鉄道ファンや観光客を集め、当時存続の危機に瀕していたいすみ鉄道を再起させることができるのではないかと考えたのです。このアイデアは見事的中し、その他の涙ぐましい努力も相まって念願の黒字を達成、当面の存続が決定しました。

FullSizeRender
▲いすみ鉄道を走るキハ52 125+キハ28 2346
(2019/9/7 12:45  西大原ー上総東間)

話が脱線しましたが、そんな鳥塚氏が2019年9月にトキ鉄社長に就任後、ずっと目を付けていたのがクハ455-701というわけです。トキ鉄は特に赤字というわけではなく、存続問題に関わるような危機に瀕しているわけでもありませんが、「雪月花」と並ぶ新たな観光列車として元B06編成のクハ412-6とクハ455-701を取り換えて運行するようです。国鉄急行色を復刻するということもあり、全国からファンが殺到しそうですね。私も機会があれば行こうと思います笑


413系の運行時期や運行区間は?

IMG_4467
▲七尾線時代のB06編成
(2020/7/19 6:03  金沢駅にて)

前述の通り、車体塗装が順調に進めば今年4月上旬から中旬にかけて直江津に搬入され、試運転等を行った上で早くとも5月中には運行開始が予定されています。また、余剰となるクハ412-6は4/29に直江津駅構内で開業予定のD51レールパークで保存されることが決定しています。なお、現時点で運行期間は検査期限の2022年までを予定しているそうで、その後はD51レールパークに動態保存するか、あるいは反響が大きければ検査を通してさらに運行を延長することも検討しているようです。動態保存してくれるだけありがたいですが、欲を言えば本線上でしばらく運行してほしいところです。

運行区間は日本海ひすいライン(市振〜直江津)と妙高はねうまライン(直江津〜妙高高原)を通した全線で、土休日に運行されます。後者は詳細なダイヤが既に決定しており、直江津8:43→妙高高原9:37(8350M)、妙高高原9:44→直江津10:35(8347M)の1往復となります。一方で、前者については詳細なダイヤが未定ですが、直江津ー市振間と直江津ー糸魚川間をそれぞれ1往復する予定となっています。


七尾線撤退後に思わぬ形で存続が決定したクハ455-701。これからも最後の急行形車両として活躍を続けて欲しいですね。また、D51 827の動態保存など、今後の鳥塚社長の手腕にも目が離せません。